「エンジニアのためのデザイン思考入門」を読んだまとめ
以下の本の内容を一部引用して個人用にまとめます。
エンジニアのためのデザイン思考入門
- 著 角征典
- 著 東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト
- 著 齊藤滋規 他4名
ISBN-10: 4798153850 ISBN-13: 978-4798153858
「デザイン思考とは」
デザイン思考の5つのステップ
- 共感
- 問題定義
- 発想
- プロトタイプ
- テスト
このステップを理解することは勉強として大事。 でも、この本で紹介されていた別記事で、5つのステップでの勉強は否定されている。
d.school デザイン・プロセスの話はもうやめよう Ray Yamazaki
問題定義(define)
正確には「みつけたことにしました」。ユーザーが実際にそう思っているかは、プロトタイプを持っていって確かめればよいので、この時点ではあまり重要ではないのです。
これぐらいの思い切りが大事、いい雑さの指標になる。
思考方法のフレームワーク
LONGER TERM t (長期的) | SHORT TERM t (短期的) | |
---|---|---|
急進的イノベーション(BREAKTHROUGH INNOVATION) | 未来志向 FUTURE THINKING | デザイン思考 DESIGN THINKING |
暫定的イノベーション(INCREMENTAL INNOVATION) | 生産思考 PRODUCTION THINKING | エンジニアリング思考 ENGINEERING THINKING |
- Introducting a “Way of Thinking” Framework for Student Engineers Learning to Do Desing (M. Lande and L. Leifer, American Society for Engineering Education, 2009)
これらの4つのカテゴリをチームで「何度も行き来すること」がプロジェクトの成功(「WOW」の評価)につながると述べています。
どれか一つが大事だとか、デザイン思考が大事だとかいう話ではなく。これら全て身につけて行く必要があるところが面白い。 Design Thinking と Agile が時々喧嘩するのは、Agileは Engineering Thinking だからかな?
EDPとは
EDPでやろうとしていることも同じです。EDPの授業を通して「体験」だけを提供する人物になれということではありません。そのセンスを持った、高いレベルのエンジニアや科学者になってくださいということです。それが、社会的にベストなソリューションになると考えています。
EDPが目指すもの、至って欲しいところ。完全に同意する。ここでの社会的にベストな解決方法というのは、こういった人材がどんどん世の中に出ることだと思います。
デザイン思考とクリティカルデザイン
クリティカルデザインでは、プロセスよりもコンセプトを重視します。
デザイン思考は、ユーザー行動を分析し、今からでも使えるような何か、または改善案を形作っていくこと。
クリティカルデザインは
どれだけ自分の持った疑問を社会に提示して、人を挑発し刺激することができるのか
実用的かどうかは価値基準の一つにすぎません
EDPのモットー
“Dance with ambiguity”
By Prof. Larry Leifer, Stanford University
as an origin of Design Innovation Paradigm
多様性のあるチームを作る
「Team Geek」[Brian W. Fitzpatrick, Ben Collins-Sussman 著、オライリージャパン]より
あらゆる人間関係の衝突は「謙虚(Humility)」「尊敬(Respect)」「信頼(Trust)」のいずれかの欠如によって生じます。
フード理論
会議でのディスカッションが真面目にならないように、会議では山盛りのお菓子を出すようにしている。お菓子を口に入れた人が何を語っても真実味がないからだ。(中略)おかしなアイデアが出るように、会議の場からおかしなことにしたいのだ。
付箋紙の色
まず、誰の発言かを判別しにくくすることです、すべを「チームの意見」として位置づけるためです。
付箋の剥がし方 How to peel off Post-its
共感
なぜ共感が難しいかを考えてみると、基礎となる教養が不可欠だという話になってくるからです。
なるほど。
共感と同情
腑に落ちるという意味での「共感」は、単に他者に感情移入する、「同情する(Sympathize)」こととは違います。同情は、他者を自分と同一視して、他者の状況を自分のこととして感じているわけで、他者に端を発していても最終的には自分の中で閉じられてしまう感情です。そのため、同情を通して未知のことを理解しようとしても、独りよがりになっていますでしょう。 一方、共感は、相手に自分に似たところがあると感じることはあっても、相手を自分と同一視することはなく、かといって、自分と完全に切り離して客観視しているのでもない、その中間にある感覚です。
ユーザーリサーチ
デザイン思考におけるユーザーリサーチと市場調査の違い
ユーザーリサーチ | 市場調査 | |
---|---|---|
目的 | 発想の種(インスピレーション)を得る | 事情確認、仮設の検証 |
視点 | <問>主観的、拡散的 | 客観的、分析的 |
現実との接し方 | 思考だけでなく感覚、感情、身体、個人的経験を動員して感受する | 現実を概念化する |
理解の仕方 | コンテクストと一体に物語として全体的に理解する | コンテクストから分離した概念と現実の対応関係、概念間の関係を見る |
評価基準 | 発想を刺激すること | 論理の破綻がない、信頼性、多義性がない、もれがない |
ユーザーはだいたい決まっているけれども、今までにない発想の製品・サービス、使い方を提案したいというときは、「エクストリームユーザー法」を使ってみるのもよいでしょう
多様性と共感の広がり
個人からチームさらに利害関係者、それらの共感を合わせてもユーザーニーズとは完全一致しないが、それでもどんどん漸近している様子がわかる。
ユーザーリサーチが独りよがりにならないために
チームメンバーの多様性であったり、チームの外部の多様な人とかかわること、ユーザーのコンテクストを全体として理解すること、物語を語ることやプロトタイピングは、ユーザーリサーチが独りよがりになるのを防ぐ有効な手段になります。
多様性の意味
デザインチームとして共感できる範囲が広がる。
アイディアを生み出す
“We are designing verbs, not nouns.” -Bill Moggridge
データをモデル化する
- 流動モデル (Flow Model) : 関係者のやり取りの流れ
- 文化モデル (Cultural Model) : 関係者に影響を与える文化や方針
- 物理モデル (Physical Model) : 活動の環境やレイアウト
- 順序モデル (Sequence Model) : 活動を構成する作業の順番
- 道具モデル (Artifact Model) : 活動で使用する道具
- 生活モデル (Day-in-the-Life Model) : 生活全体と活動の様子
- 関係モデル (Relationship Model) : 活動における人間関係
- 協調モデル (Collaboration Model) : 流動モデルの変形
- 自己モデル (Identity Model) : 自分らしさの強化
- 知覚ボード (Sensation Board) : ビジュアルイメージ
- Contextual Design, Second Edition: Design for Life (Interactive Technologies)
インサイト
インサイトとは何かをきっかけに新たに気づいた情報のこと
インサイトの発見のためのTCS
- Tensions (対立)
- Contradictions (矛盾)
- Suprisings(驚愕)
TTFTFカード
Out of Box
寸劇テンプレート、劇作家ケン・アダムスより
Story Spine
Once upon a time...(あるところに・・・がいました)
Every day...(毎日のように・・・していました)
Until one day...(あるとき・・・が起こりました)
Because of that...(そのせいで・・・ことになりました)
Because of that...(そのせいで・・・ことになりました)
Because of that...(そのせいで・・・ことになりました)
Until finally...(ついに・・・しました)
And ever since then...(それからというもの・・・)
どこまで雑に作るのか?
今後の方向性を示すようなフィードバックが必要なときは、機能や見た目の品質を下げ、逆に細部の品質を高めるようなフィードバックが必要なときは、全体的な品質を高める必要があります。雑な気持ちで「雑に」作らないように気を付けておきましょう。
プロトタイプとその種類
省略 | Fidelity | 正式 | 意味 |
---|---|---|---|
CEP | Low | Critical Experience Prototype | ユーザー体験を含む。4コマ漫画やクラウドファンディングの写真 |
CFP | Low | Critical Function Prototype | ダンボールの模型。Hunter-Gathere Model。重要な部分を見極め作る |
DHP | Medium | Dark Hourse Prototype | 穴馬。チームに新鮮な視点を与える。正気を捨てて |
FKP | Medium | FunKtional Prototype | これまでのプロトタイプをまとめる。まだ完全に動かなくていい |
FCP | Medium | FunCtional Prototype | 完璧じゃないけどだいたい動く、KじゃなくてC |
XFP | high | X-is-Finished Prototype | 中心機能完成プロトタイプ。狩野モデル::魅力品質 |
VFP | high | Validated Final Prototype | 量産の前の試作機 |
まとめ
デザイン思考について工学部の学生の視点、美大生の視点、先生の視点。様々な人が各章を書いていくことで、「デザイン思考で作っていくとはなんだ」を浮き彫りにしていっている。読み終わった今ではどうやってデザイン思考とともに物を作っていったら良いのかが、かなり明確になっている。もちろんこれでうまく行くわけじゃない、ここから失敗よりよい失敗を通じて体得獲得していく必要がある。日々アジャイルやスクラム、そして切り離してデザイン思考のことを考えていた自分に、少し違った視点からいい具合に痛打を食らった。そう、これらは全部物を作るために分けて考えるものじゃなくて、一緒になって考えなければいけないことなのだ。